伝説の編集長が教えてくれた、視点を増やす方法

<ワークショップ情報>

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こんにちは。「子どものための Critical Thinking Project」を主宰しています、狩野みきです。

ビジネス・ブレークスルー大で私が担当している原書講読の講座では今、Rules of Thumb という本を読んでいます。副題には 52 Truths for Winning at Business Without Losing Your Self とあるので、ビジネスで成功するためのハウツー本かと思って読み始めたのですが…

読み進めていく内に、この本は「ハウツー」を越えた、普遍的な何かを教えてくれる書であることがわかってきました(邦訳は「魂を売らずに成功する」)。著者の Alan M. Webber 氏は米の伝説のビジネス誌の元編集長。奥が深いんです。

たとえば、この本には「目的は何か、問い続けよ」というルールが登場します。本当の目的がわからないままでは何の方向性も見えてこない、ということなのですが、このルールはどんな世界でも通用しますよね。たとえば、何のために留学/転職/結婚するのか…目的がはっきりしていないと、失敗する可能性は十分にあります。

このブログでも、視点を増やすことの重要性については何度か書いてきましたが(たとえば、こちら)、ここでおさらいをしますと:視点を増やすことは、①物事の全体像を見るためにも、②自分とは違う立場にいる人の主張を理解するためにも、③わかりやすく説明するためにも有用で、critical thinking—「きちんと考える」プロセス—においては、視点を増やすことは不可欠なのです。

Rules of Thumb には、視点を増やすことがビジネスチャンスにつながる、と書いてあるのですが、その視点を増やす方法がなんともおもしろいのです:

What would an anthropologist say about your company culture? If you invited a cartoonist to draw your business, what would the picture look like? (文化人類学者は、あなたの企業文化をどう評価するだろうか。あなたのビジネスを漫画にしてもらったら、どんな感じになるだろうか)

文化人類学者やマンガ家を想定して「部外者の視点」に思いを巡らすという手法はビジネスだけでなく、様々なシーンで活用できると思います。(今これを読んで下さっている方が文化人類学者かマンガ家さんであれば、話は変わってきますね)。

たとえば、自分という人間。自分は「こういう人間」だと思っているけれど、もしもマンガ家(山藤章二氏のような風刺漫画家のイメージ)に自分の絵を描いてもらったら、思っていた通りのイメージになるのか。日頃苦手だなぁ、と思っている人のことも描いてもらったら、自分と同じような「苦手」なイメージの絵になるのかどうか。

あるいは、自分の住んでいる辺りや所属先(学校、お稽古場、グループ、職場など)を、もしも文化人類学者が研究したら、どんな「像」ができ上がるのか。

普段見慣れている人や風景を他者の視点から眺めてみると、自分が抱いていたイメージを問い直すことになるかもしれませんし、また、「いやだなぁ」と思っている性質も「いや、けっこういいのかもしれない」と思い直すきっかけになり得ると思います(逆も真なり、ですが)。

マンガ家と文化人類学者の「目」、試してみませんか。